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【20%OFF】 TS少女ハルキくん




1: 名前なんか必要ねぇんだよ! :2019/02/22(金) 21:24:24 ID:/Fus1vzU

モバマスの新アイドルやむちゃこと夢見りあむちゃんのSSです。


※ 参考画像



B8elzQR


UHY9AfC


(以下のSSからの)続きだぜ。




https://jbbs.shitaraba.net/bbs/read_archive.cgi/internet/20196/1550319748/l50

https://jbbs.shitaraba.net/bbs/read_archive.cgi/internet/20196/1550492288/l50 




2: 名前なんか必要ねぇんだよ! :2019/02/22(金) 21:25:21 ID:/Fus1vzU

カッカッ

スマホに指を滑らせていく。
フリック入力の音が心地よいリズムを刻んでいる。

…よし。

今日はあきらちゃんと一緒にタピオカジュースを飲みに来たよ☆
タピオカぷるぷるでお肌によさそー!
オタク達もタピオカ飲んでお肌を綺麗にしたら~?

ぽちっと。

SNSに投稿する。
こまめなSNSへの投稿を通したファンとの触れ合いこそ、人気アイドルへの近道なのだ。たぶん。

ぽこん。

オタクだとぉ!?ふざけんじゃねーよ!お兄様だろぉ!?
↑お兄様だとぉ!?ふざけんじゃねーよ!兄様(あにさま)だろぉ!?
↑兄様だとぉ!?ふざけんじゃねーよ!にぃにだろぉ!?
↑だいじっこ!

すぐにファンの人達がリプを返してくれる。
駆け出しの頃は全然反応がなくて凹んだこともあったけれど、地道なアイドル活動のおかげか、
今では沢山の反応が貰えて嬉しい。

何故かぼくの投稿内容と全然関係ない方向に発展していることがよくあるけど。

「相変わらず先輩のリプ欄カオスですね」

ちゅ~、ずぞぞ。

タピオカジュースをストローで啜りながらぼくのツイを見ていたあきらちゃん。

砂塚あきらちゃん。
半年ほど前にPサマにスカウトされたぼくの後輩アイドルだ。
ゲーム配信とかをやったりしているイマドキのコ。
凄く頭の回転が早くて、年下なのに強者のオーラがあるコ。
あと顔がいい。しゅき。


「でも、駆け出しの頃なんて全然リプとか貰えなくてやむやむしそうだったしね~」

ちゅ~、ずぞぞ。

「その頃に比べたらこうやって反応が貰えるだけで全然おっけー。炎上してでも有名になりたい!」

底に溜まったタピオカを吸い上げながら返答する。
これもうちょっと飲みやすくならないかな。

「とかいって炎上させてPさんに叱られたいだけなんじゃないですか~?」




4: 名前なんか必要ねぇんだよ! :2019/02/22(金) 21:27:54 ID:/Fus1vzU

ぶっ!

突然のブッコミに驚いてジュースが気道にはいった。

「げほっ!げほ!急に何言ってるし!」

「え~だって先輩、Pさんにツイのプチ炎上をPさんに怒られている時いっつも嬉しそうですよ?」

「嬉しそうじゃないし!」

いや、表情に出ているかもしれない。これ以上は止めておこう。
Pサマに怒られている時間は確かに好きだから、このまま続けたらボロがでる。

「じゃあそういう事にしておいてあげます♪」

勝ったと言わんばかりの得意げな表情のあきらちゃん。
くそー。こんな力関係で先輩が務まるのかよぉ。

「ぐぬぬ…」

いつの日か絶対にあきらちゃんにマウントを取ってやる。
そう心に誓った。



その後は底に溜まったタピオカに二人揃って悪戦苦闘していた。
なんとか最後のタピオカを食べ終わる。

「あっそういえば先輩。タピオカには…」

ぽこん。

さっきのツイに新しいリプが来たみたいだ。
どれどれ。


おっ待てい、基本的なタピオカの主成分はデンプンだゾ。
コラーゲンは含まれていないから美肌効果はないってハッキリ分かんだね。
※ 最近コラーゲン入りのモノも市販されているけど、写真のお店には入っていないゾ


「…って言いたかったんですけど、もう言われちゃったみたいですね…」

ぽこん。ぽこん。ぽこん。

(タピオカがお肌にいいなんて)しらねーよそんなの
オレたちはこれからの120分でりあむをサンドバックにすることを確認した
マウントを取られているりあむこそ、本当のりあむだぜ

「もっと早く教えてよぅ…やむ…」




5: 名前なんか必要ねぇんだよ! :2019/02/22(金) 21:27:55 ID:D/w5DTEQ

ホモが湧いてますね…




7: 名前なんか必要ねぇんだよ! :2019/02/22(金) 21:33:27 ID:/Fus1vzU

ラジオの収録を終えて事務所に戻った時には、ようやくSNSの通知が落ち着いていた。

ひどい目にあった…。

Pサマも忙しかったのか助け舟出してくれなかったしなー。

「りあむさん、お疲れ様です」

「ひゃあ!」

後ろから急に声をかけられて飛び上がる。

「Pサマ!急に驚かせないでよぉ!」

振り返るとPサマが立ちつくしていた。

「驚かせるつもりはなかったのですが、珍しいりあむさんの顔を見れました」

うぅ…恥ずい…やむやむ…

そう言ってPサマはコートを脱いで自席の椅子にかける。

「そういえば日中はあきらさんと出かけていたみたいですね」

あれ?そのことはPサマに伝えてないはずなんだけど。
もしかして───

「Pサマ、ぼくのツイ見てた?」

「はい。タピオカの件、盛り上がっていましたね」

そこまで見てたの!?

「もー!見てたなら助けてよぉ!」

きっとPサマが助け舟を出してくれたら一瞬で鎮火したのに~!

「はは、すみません。ですが炎上していたわけではなく、ファンとのスキンシップだと感じましたので」

一方的にマウントを取られるアイドルのスキンシップって一体…。

「きっと私が介入したら、いつものようにファンの皆さんが冷めてしまうと思いましたので静観していました」

そう、ぼくのファンはやたらPサマのお願いには聞き分けがいいのだ。
実はぼくのファンを装ったPサマのファンなんじゃないかとぼくは睨んでいる。

「ついさっきまでマウントの嵐だったんだよー?」

ぽん。
Pサマの大きな手がぼくの頭に置かれる。

「ですが、小さな勘違い一つでここまでファンと盛り上がれるアイドルはきっとりあむさんだけですよ」

そうかなぁ…?

なでなで。

そうかも。

Pサマにナデナデされるの気持ちいい…。
ぼくってもしかしてチョロい…?




甘く、囁き咲く。




8: 名前なんか必要ねぇんだよ! :2019/02/22(金) 21:38:11 ID:/Fus1vzU

「たしか今日のりあむさんの仕事はラジオの収録で終わりでしたよね?」

「うん。さっき終わらせて戻ってきたトコ」

「では、この後お時間大丈夫ですか?」

なんだろう?打ち合わせとかかな?

「大丈夫だけど…お仕事?」

「いえ、もしよろしければなのですが…」

「この前の大雪でお流れになってしまったディナーをこの後どうかと思いまして」

お流れになったディナー。
先月行ったライブの成功祝いとしてPサマが誘ってくれていたんだけど…。
イロイロあってお流れになっていたのだ。
そう、イロイロ…イロイロ…///

「突然のお誘いなので、難しければまた日を改めようかと思いますが…」

イロイロあった大雪のあの日以降、
ぼくもPサマも忙しくてなかなか都合が合わずズルズルと半月ほど経ってしまっていたのだ。

「ううん、ぼくは大丈夫だよ。それよりPサマは大丈夫?無理してまで連れて行ってくれなくていいんだからね?」

この前の大雪の日の時もそうだったけど、Pサマは自分を顧みない行動をすることがある。
もしかしたら今日のディナーも、明日のPサマのお休みを犠牲にするつもりかもしれない。
そこまでして連れていって欲しくはなかった。

「心配していただいてありがとうございます。ですが、大きな仕事が一区切り付きましたので大丈夫ですよ」

また頭を撫でられる。

「なら…行く」

「よかったです。ではPCをシャットダウンして来るので少し待っていてください」

そう言ってPサマはデスクに向かっていった。

………。

正直、あれこれ言ってたけど、
誘われた時点からニヤケ顔を抑えるので精一杯でした。




9: 名前なんか必要ねぇんだよ! :2019/02/22(金) 21:39:48 ID:cOIDn7IM

かわいい




10: 名前なんか必要ねぇんだよ! :2019/02/22(金) 21:44:39 ID:/Fus1vzU

「ここです」

「はえ~すっごい隠れ家っぽい…」

Pサマに案内されたのは、ドラマとかに出てきそうな感じのお店だった。

ビルとビルの間の細く薄暗い路地から伸びる地下への階段。
その先に今日のお店はあった。


「いらっしゃいませ」

きっちりした服に身を包んだ店員さんが僕たちを迎えてくれた。
うわーなんか高そうなふいんきを感じる…。大丈夫かな…。

「先程電話で予約した───」

Pサマがスラスラと店員さんに予約の旨を伝える。

「こちらです」

店員さんに連れられて席へ通された。
他のお客さんから見えないようになってる個室だった。

「個室なんだ…なんかキンチョーするかも」

「りあむさんも人気アイドルですからね。念の為個室にしました」

そう言ってPサマはメニューを取り出す。

「飲み物はこちらから選んでください。勿論まだ未成年なのでお酒はNGですよ?」




「それじゃあ」

烏龍茶が入ったグラスを掲げる。

「りあむさんのライブ成功を祝しまして」

「乾杯」

ちん


それからはPサマがあらかじめ注文していたコース料理を堪能しながら色々なことを話した。

アイドル活動のこと、この前あきらちゃんと寮で餃子パーティをしたこと、ぼくのファンが実はPサマのファンじゃないかってこと。

そして

プライベートのこと。

Pサマはあまり自分のプライベートの事は喋らない。
ぼくが知ってるのは一人暮らしをしていることと、ペットのインコを飼っていることだけだ。


そういうわけで、今日はチャンスだ。

かねてより温めてきたPサマのプライベート丸裸作戦を決行する時がきたのだ。




11: 名前なんか必要ねぇんだよ! :2019/02/22(金) 21:48:44 ID:/Fus1vzU

「そ、そういえばさ」

少し声が上ずっているかも。
落ち着けぼく…。KOOLになるんだ…。

「Pサマってお休みの日は何してるの?」

暑い。少しばかり動悸が早くなる。
これで彼女と過ごしている。なんて言われたら豆腐メンタルなぼくは簡単に崩れ去るかもしれない。


「そうですね…。ペットと戯れたりしていますね…」

「Pサマのツイ…アイドル関連以外は大体インコのことだからね…」

しかもぼくの普段のツイよりいいねが多い。
どういうことなの…?

「他には…何かないの?」

それしても暑い。この店暖房が効きすぎな気がする。

「………」

一瞬苦しそうな顔をしたあとPサマは。

「りあむさんのことを考えてたりします」

へ?もしかしてそれって…!

「それにあきらさんの事も」

ん?

「どうやったらお二人がより一層輝けるか?というのに想像を巡らせるのは楽しいですよ」

…。

「仕事大好きだね…Pサマ…」

なんだか仕事ありきだけで見られている気がしていて悔しい。

「そうですか?」

もっとぼくだけ見て欲しい。
仕事なんて関係なくぼくの事だけを考えていて欲しい。
なんだか熱くなった頭でそんなことを考えていた。

「うん…でもお仕事抜きで…ぼくのことだけ見てくれると…嬉しいな」

なんだか風邪をひいた時みたいくらくらする。

「りあむさん…?」

ほんと暑い。

「ぼくを見つけてくれたのは…Pサマなんだよ?」

ふわふわして気持ちがいい。

「だから…Pサマは責任持って…ぼくのことを可愛がらないと…ダメなんだよ?」

Pサマが二人いるように見える。
なんだか夢の中にいるみたい。

「Pサマは…」




12: 名前なんか必要ねぇんだよ! :2019/02/22(金) 21:54:53 ID:/Fus1vzU

りあむさんの飲んでいた烏龍茶を確認します。
…やられました。烏龍茶にアルコールを入れられたようです。

恐らく私が注文した烏龍ハイと店員の方が誤って渡してしまったんでしょう。


「Pサマは…ぼくのこと…もっとすこらないと…」

お話の途中から顔が赤くなって段々とフラフラしていくりあむさんで気が付きました。


あまり良い状況とは言えません。
故意ではないと言え未成年の飲酒は、メディアが騒ぎ立てるには格好の餌でしょう。

どうやってりあむさんを無事に帰すか?
それだけを考えていました。


公共交通機関での移動は一番まずいです。

かといってタクシーも…。

そうなると…。

一つだけ候補が浮かびました。

幸いここから徒歩で向かえる距離ですし、既に帰宅ラッシュは過ぎていて人通りも少ないはずです。

りあむさんには申し訳ありませんが…。

「りあむさん、申し訳ないのですが夕食はここでお開きです」

「はぇ…?ぼくまだPサマとお話ししたいー」

テーブルに赤くなった顔を乗せて足をパタパタさせるりあむさん。

かわいい。
こういう方針のアプローチもありかもしれないですね。

なんてそんなことを考えてる時ではありません。

「恐らく自覚してないと思われますが、今のりあむさんは酔っています」

「メディアに嗅ぎつけられて炎上"系"アイドルから炎上アイドルになるのはりあむさんも本意ではないと思われます」

「ですので、申し訳ないのですがアルコールが抜けるまでここから近くの場所で過ごして頂きたいのです」

「ここから近くの場所って~?」

これは本当に最終手段だ。

「私の…自宅です」




なんでもしてくれる姪っ子がムラムラさせてくるので性処理までヤラせちゃう話




14: 名前なんか必要ねぇんだよ! :2019/02/22(金) 22:01:19 ID:/Fus1vzU

あの後、手早く会計を済ませて店を出て徒歩で私の自宅に向かいました。

そんなに距離はないので問題ないと思っていたのですが。

「もー歩けないよー」

りあむさんが道端に座り込んでしまったのです。

アルコールが入っているので体が気怠いことに加えて、感じた事をそのまま行動に移してしまっているのでしょう。

なんとか歩かせようとしたのですが、りあむさんは足元もおぼつかなくなっていました。
このままでは怪我の恐れもあったので、背負っていく事にしたのですが…。


甘く見ていました。

りあむさんは小柄ですが、とても女性らしい身体をしています。

故に背負うという密着した体勢になると…。


やばい。

やばいです。

「むふふーPサマの匂いがするー」

私の背中の上で形を変える双丘。
首元から伝わってくるりあむさんの甘い香り。
抱えた太ももの柔らかさ。

私はもうやばいと思います。




15: 名前なんか必要ねぇんだよ! :2019/02/22(金) 22:05:54 ID:/Fus1vzU

なんとか自宅まで帰ってこれました。
苦しい戦いでしたが、理性とのせめぎ合いに私は勝ちました。

「だーいぶっ!」

ベットにりあむさんが飛び込みます。
ああもう…。

「Pサマの匂いがするー」

アラサーのベットの匂いなんてロクでもないと思うのですが…。

「ぼくはこの匂いすきーあははー」

りあむさんは酔うとタガが外れたように自由になるようです。
ですが、たまにはいいのかもしれません。

炎上系アイドルと謳いながら、実は誰よりも周りを見て誰よりも他者からの視線を気にしている方です。
故に私にも言えないようなストレスを日々貯め続けているのではないかと思います。

このような形でも、りあむさんの負担を少しでも軽くできるならお酒の力を頼るのも悪くはありません。

勿論、次は成人した後ですが。




17: 名前なんか必要ねぇんだよ! :2019/02/22(金) 22:09:16 ID:/Fus1vzU

少し一息つきました。
相変わらず、りあむさんはベットでゴロゴロしているようです。

「Pサマはさー」

「カノジョとかいないのー?」

突然の質問。
酔っているりあむさんの言動はさながらLiPPSの某アイドルに通じるものがありますね。

「いえ、お付き合いしてる特定の方は今は…」

社会人になってからというもの仕事一辺倒で全くそのような機会が無かったため当然とも言えます。

「じゃあさー」

「ぼくがカノジョに立候補してもいい?」

…!?

「だめー?」

思わず驚いてしまいました。
りあむさんなりのジョークでしょうか。

「冗談はよしてください…」

「冗談じゃないよ」

視線を向けると、ベットの上で四つん這いになってこちらを向くりあむさんがいました。
その瞳はしっかりとこちらを見据えて───。

「ぼくはPサマのこと好きだよ」




18: 名前なんか必要ねぇんだよ! :2019/02/22(金) 22:14:24 ID:/Fus1vzU

ハッキリとそう言いました。

「Pサマはぼくのこと嫌い?」

立て続けに浴びせられる情報に頭がついて行きません…。

「…Pサマ?」

まともに回らない頭を回して必死に言葉を紡ぎます。

「嫌いなわけありません。嫌いだったらあなたのプロデューサーなんて出来ません」

「じゃあカノジョにしてくださいっ!」

真っ直ぐな好意。
彼女とは一年以上の付き合いになります。
酔っているとはいえ、彼女が無意味にこんな事を言うとは思えませんでした。

どうして───
どうして私なんだろう。

彼女は多くの人に愛されるシンデレラで。
私は舞踏会までいく馬車しか用意できないしがない魔法使いだ。

「どうして…どうして私なんですか?」

「私は何処にでもいるただのサラリーマンで」

「りあむさんは多くの人に愛されるシンデレラです」

「もっと相応しい方が───」

そこまで言った時だった。

「いないよ」

「あなたより惹かれる人なんていない」

ベットの縁に腰掛けた彼女はこちらを見据えてそう言った。

「…どうして」

「Pサマはさ」

「道端に落ちてる石とかを集めてた頃ってあった?」

突然どうしたのだろう。

「え、ええ…。とは言ってもとても小さい頃ですが」

汚れているけれど綺麗な石を持ち帰っては綺麗に磨いて飾っていた頃が私にもあった。




19: 名前なんか必要ねぇんだよ! :2019/02/22(金) 22:20:18 ID:/Fus1vzU

「やっぱり」

嬉しそうに彼女が笑う。

「ぼくはそれと同じなんだよ」

嬉しそうに足をぱたぱたとさせながら彼女は続ける。

「薄暗い道端に落ちている誰も見向きもしない薄汚れた石ころだったんだよ」

人気アイドル・夢見りあむ。
今までに無いアプローチで瞬く間に多くのファンを獲得した新世代のアイドルと呼ばれる彼女。
そんな彼女は自分を薄汚れた石ころと評した。

「その石ころには何にもなかったんだよ」

「宝石のような美しさも、他の石ころと調和する色もなかった」

「そのくせ他の石ころと違って変にとんがっていたから、周りの石ころに溶け込むこともできなくて」

「ついにはじき出されて転がって」

「気がついたら日の当たらない道端でぽつんと捨て置かれた石ころになっちゃってた」

彼女は淡々と続ける。

「石ころはずっとこのまま日の当たらない道端で誰にも見つけられないままなんだって思ってた」

「だけどそんなある日、薄暗い路地にやってきたある人がその石ころを見つけてくれた」

「そして誰が見ても汚れて形も歪だった石ころを手に取って」

「その人は美しいって言ってくれたんだ」

嬉しそうに彼女は笑った。

「あとは知っての通りだよね」

「その人は汚れた石ころを一生懸命磨いてくれた」

「だけど、とんがった形は変えないで」

「それを展示会に持って行ったんだ」

「そしたらあら不思議」

「いままで見向きもされなかった石ころは色々な人から美しいと絶賛されましたとさ」

「おしまいおしまい」

改めて彼女は私に向き直る。

「ではここでPサマに問題です!この時の石ころの心境を答えなさい!5文字以内で!」




20: 名前なんか必要ねぇんだよ! :2019/02/22(金) 22:25:08 ID:/Fus1vzU

5文字以内!?
咄嗟に頭を悩ませる。

「はい時間切れ!答えはね…」



「"ありがとう"だよ」

「誰にも見向きもされなかったぼくを見つけてくれて」

「はみ出しものだったぼくをそのままでいいって言ってくれて」

「手のかかるぼくをここまで育ててくれて」

「ありがとう、Pサマ」

とびきりの笑顔。

「Pサマはぼくをみんなから愛されるシンデレラって言ってくれたけど」

「ぼくはね」

「磨かれたぼくを見て特別な人間が、特別な言葉で手を差し伸べてくれるより」

「どこにでもいるサラリーマンのあなたが」

「あの薄暗い道端で、誰にも見向きされなかったぼくに手を差し伸べてくれたことが」

「何よりも嬉しかった」


「だから改めて言うよ」

「ぼくはPサマのことが好き」

「Pサマは…ぼくの事をどう思ってる?」




21: 名前なんか必要ねぇんだよ! :2019/02/22(金) 22:28:45 ID:/Fus1vzU

正直なところ、これまで生きてきた二十数年間で一番強い好意をぶつけられて、私は揺れていました。


彼女のことは正直に言って好意的に思っています。

彼女との出会いは偶然でしたが、私は彼女に可能性を見出しました。
かつて、私が取りこぼした可能性を彼女なら実現してくれると思ったのです。

それから彼女がアイドルとして大成するまでそう時間はかかりませんでした。
彼女は自身を何にもない路傍の石と評していましたが、彼女が大成したのは彼女自身の頑張りによるものです。

周りを見ていないようでよく観察しており、炎上系と言われながらキッチリと一線を弁えている。
そんな影の努力家である彼女を見て、私自身も何度も活力を貰いました。



ですが私は。
アイドルとプロデューサーという一線以前に。
彼女に相応しい人間ではないのです。

かつて私が取りこぼした可能性。
今尚背負い続けている十字架。

この十字架を忘れて、誰かと幸せになるなんてことは私には出来ません。

だから。

「りあむさん。私は…」




すー。すー。

小さな寝息が聞こえてきました。


そっと彼女に布団を被せる。

そして、どこかほっとしている自分もいました。

かつての罪を告白して彼女に失望されないで済む。

そう思ったのです。




22: 名前なんか必要ねぇんだよ! :2019/02/22(金) 22:34:00 ID:/Fus1vzU

ちゅんちゅん。

鳥の鳴き声が聞こえる。

目を開けると、そこは見知らぬ天井。

「ここは…」

確か昨日は、Pサマにディナーに連れていってもらって…。

それ以降の記憶がはっきりしない。

なんだかふわふわして気持ちが良かったことだけ覚えてる。

寝惚け眼を擦って辺りを見渡すと。

ソファーで横になって寝ているPサマ。

え? え?

えっーーーー!?


その後驚きのあまり大絶叫を上げて、Pサマが飛び起きた。

その後事情を聞くと、店員さんの誤りで提供されたウーロンハイを飲んだぼくは酔っ払って、メディア対策にPサマの家に匿われたらしい。

せっかくのPサマのプライベートを知るチャンスをフイにした事を勿体無く思いながら、Pサマの家にお邪魔できてぼくはちょっぴり得した気分なのでした。




さきゅばすのやわこいとこ。




23: 名前なんか必要ねぇんだよ! :2019/02/22(金) 22:37:02 ID:/Fus1vzU

「オタク共ー!今日はありがとーー!」

あーっ!おぅううっす!おーっ!うーっす!(感動)
ダイナモ感覚!ダイナモ感覚!YO!YO!YO!YO!

会場にファンの声が響き渡る。

今日はりあむさんの初のソロライブ。

そこまで大きな箱ではありませんが、チケットが一瞬で売り切れたことからも、りあむさんの人気が伺えます。


アンコール!アンコール!アンコール!

会場からアンコールの声が響き渡ります。

その声を嬉しそうな表情で受け止める彼女。
舞台横にいる私に目配せで確認をしてきました。


”こうなる事を想定して箱はまだ抑えています。存分にやってください。”

目配せで彼女に伝えると、彼女はファンに向き直って嬉しそうに走って行きました。


自身を薄汚れた路傍の石と評した彼女。

ですが、今ステージの上で笑う彼女は。

眩しいほどに輝きを放っていました。




あの日の翌朝。

りあむさんはお昨晩の出来事を忘れているようでした。

これで───。

これでよかったのです。

だって。

美しく輝く宝石は。

悪い魔法使いの手元で鈍く輝くよりも。

舞踏会のステージで眩しいほどに輝くのが相応しいのだから。




24: 名前なんか必要ねぇんだよ! :2019/02/22(金) 22:38:25 ID:/Fus1vzU

以上です。

本当は今回でまとめたかったんですが、とんでもない文量になりそうだったので、
次回でまとめる予定です。

やむちゃSS流行らせコラ!




26: 名前なんか必要ねぇんだよ! :2019/02/22(金) 22:47:40 ID:dgL/Pw4A

恋煩いしちゃうよぉ……
もう忘れられなくなっちゃうよぉ……




28: 名前なんか必要ねぇんだよ! :2019/02/22(金) 23:29:45 ID:Y7AajJQs

次回で一区切りとかサミシイ…サミシイ…




29: 名前なんか必要ねぇんだよ! :2019/02/22(金) 23:47:45 ID:SnfnazI.

あーヤバイ!(ヘドバン)


あーやばい!(ヘドバン)




33: 名前なんか必要ねぇんだよ! :2019/02/23(土) 10:49:48 ID:diSWE3pU

ファンも祝福するから遠慮せず結ばれろ




34: なーなしー! :2019/02/23(土) 20:20:55 ID:???

ホモは文豪
ノンケも文豪






https://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/20196/1550838264/







3つ目を忘れる所でした






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